フリードキンの怪作クルージング。NYクリストファーストリートで起こるホモシリアルキラー事件を追うべくアル・パチーノ扮するノンケの警官が囮捜査を目的に潜入するというストーリーで、夜は自身もレザー趣味なゲイファッションに身を包みオス野郎の盛り場でオラオラしながら異常なホモ殺人鬼を突き止めるべく闇の奥へと進んでいく…
最終的に当初の事件は存分に自分を売ったお陰でシリアルキラー逮捕に至るのだが…その後、潜入時に主人公が住んでいたアパートの隣人(ホモ)が惨殺される。場面は変わって、主人公は一時疎遠チックになっていた恋人(女)の元を訪れる。椅子に置かれた意味深なレザーとサングラス、ホモと殺人の狂気に当てられた彼の目は明らかにかつてのものではなかった…新たなシリアルキラーが誕生したのか、それとも新たなホモが生まれたのか、あるいは両方か、彼の中の混沌を全て読み取る事はできない。恋人のかけたイージーリスニングLPのサウンドを遮るように転調する、It's so easy、そしてクルージングへ出る船の映像のカット。クルージングとは男漁りを意味するホモ用語だ。
デスプルーフは、本作のオマージュでこの曲を採用している。
映画パルプフィクションでは、それまでの伏線も全くない状態で、イカれた加/被虐趣味のホモが突拍子もなく登場してきて、ビックリさせられるのだが、あれもオタ趣味なタランティーノの中では地続きで存在する世界の風景の一つに過ぎないのだ。クルージングの中で描かれる強烈なNYのホモカルチャーを知る事であなたの中のNYは一区画分拡張される。”日常”は更新され、のらりくらりとPCの前で怠惰に生きる日本の私自身の他に、地球の裏側では貧困にあえぐ明日を生きれぬ子供達がいて、NYではレザーに身を包みボディピアスをしたFF受けホモがいて、ついでにハードコアセックスをしているのだろうと想像できるようになったのである…あぁそんな事知る必要なかったのに…。
ジーンズの尻ポケットにバンダナを挿した左右の位置と色で、受け/攻め、ケツあり、SM、縛り、スカトロといった”区分”を示すといった知識も必要ない。貧困にあえぐ子供達の事も別に知らなくていいよ、結局、こんなの知ってると面白い程度の事だから。
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